風色の本だな

風色の本だな

『1000の風1000のチェロ』


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お正月気分も抜け、いよいよ忙しい日常が戻ってきました。

今日は、新しい年を迎えて初めての図書館開館日。

そして、PTA活動も始動しましたよ。

今年になって初めて中学へも足を運びました。

まずは、昨年の暮れ、学校とPTAの共催でおこなった保護者と生徒へのインターネントに関するアンケートの集計から・・・。

まだまだやることは山済み状態ですが、心も新たに、5月の総会まで、しっかりと☆楽しくね!!☆(^_-)☆


 1000の風1000のチェロ 
 

◆『1000の風1000のチェロ』 いせ ひでこ・作/絵 /偕成社

心はひとつにできる・・・ 気持ちは重ね合える・・・。

4年前の1月12日、私は、娘の小学校の5年2組の教室で、しばらくチェロのCDを流し、子どもたちひとりひとりに、心の花束を届けるような想いで、この絵本を読みました。

子どもたちは、真剣なまなざしで聴いてくれました。

この絵本は、阪神淡路大地震復興支援コンサートにまつわる、実話に沿ったお話です。

1995年、1月17日、午前5時46分、兵庫県・淡路島北部を震源に阪神淡路大震災が発生しました。規模はマグネチュ―ド7.3。戦後最悪の災害で、兵庫県を中心に24万9180棟が全半壊し、一瞬にして6433人もの尊い命が失われました。

この『1000の風1000のチェロ』の作者、いせひでこさんにとって、忘れられない風景があります。

いせさんは、1995年3月、大震災から2ヶ月後の建物も道路も生活も壊れ、犬も猫もいない神戸の街をパズルをつなぎ合わせるように歩きました。

風景は断片になって、まるで描かれることを拒否しているようで・・・はじめてスケッチ帖を白紙のままで持ちかえった旅になりました。

忘れてはいけない風景は描けないのではなく、描いてはいけないのかもしれない。描くことで安心してしまうから・・・。目と手が記憶してしまったあと、どこかにしまい忘れることもあるから・・・。

青いビニールシートとテントでいっぱいの雨の公園。ひとりの郵便屋さんが、ずぶぬれになって歩き、家がなくなった人たちのひとりひとりを探していました。

それから3年後の春、いせさんの元へ神戸から1通の手紙が届きます。

阪神淡路大地震復興支援チャリティーの「1000人のチェロコンサート」の呼びかけでした。

13歳のときにチェロに出会ったいせさんは、それ以来、チェロを弾くことで自分自身を励ましてきました。

そして、いせさんは、1000人の中の1人として、1998年11月、再び忘れてはいけない風景の前に立ったのです。

彼女にとって、チェロは、人間の形をした楽器、人間の声で歌う楽器でした。チェロを弾く姿は、まるで人が自分の影を抱きしめているように見えてならなかったのです。

風景の断片と断片がチェロの音につむがれていったコンサート。

ひとりひとりの物語がちがっても、気持ちを重ね合えれば、歌はひとつになって風に乗る。そして誰かに届く・・・。

そんな思いをいせさんは、この絵本に託しました。白紙だったスケッチ帖は、チェロを弾く人たちのクロッキーでうめられていきました。

 チェロのきょうしつにきょう、あたらしいせいとがはいってきた。

そのこは、ぼくよりずっとむずかしいきょくをペラペラひいた。

すごいはくりょくだったけど、なんだかおこっているみたいなひきかただった。

― きみ、どこからきたの?

へんじしないかな、とおもったけど、

そのこはちいさなこえでこたえた。

― こうべ。


淡いパステル調の絵が柔らかく、美しく、いせさんの思いがしみじみと伝わってきます。

言葉のひとつひとつがまるで詩のように心に響いてきます。

あの日から、もう9年の月日が流れるのですね。


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